議会改革白書
議会改革白書2010年版 市民と議会の関係づくり・市民自治体へ向けた議会改革
編著 廣瀬克哉・自治体議会改革フォーラム
生活社 2010年3月19日発行 本体3,500円 A4判 248ページ



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はじめに
 2006年5月に栗山町議会基本条例が制定されてから、まもなく4年が経過しようとしている。その間に議会改革に取り組む自治体議会は広がり、本書に収録した自治体議会運営実態調査2009では、何らかの形で議会改革に取り組んでいる議会がついに過半数となった。また、2009年末までに全国で80本を超える数の議会基本条例がすでに制定され、制定する方針のもとで検討作業中の議会も多い。今では議会改革は自治体議会にとって取り組んで「当たり前」のこととなっているといっても良い。

 しかし、それだけ広がってきたからこそ、あらためて「議会改革」の内容を問い直してみる必要も強まってきているのではないだろうか。すでに議会基本条例を制定済みの議会の中にも、制定後の議会活動から判断する限り、特段の変化があるわけでもなく、「議会基本条例を制定した」という活動以外には具体的な改革の成果が見えない議会もある。

  また、議会改革ならもう10年以上前から取り組んできていて、一般質問や質疑における対面式のレイアウトや一問一答の導入、議員個別の賛否の公開、本会議に加えて常任委員会議事録までのネット公開、CATVやインターネットによる議会の生中継や録画中継などを実現したほか、定数削減や報酬、費用弁償の見直しなどを行ってきた。すでに改革はある程度仕上がっているのだという声がきこえてくることもある。たとえば、2009年末までの時点では議会基本条例の制定例がゼロの東京都内の議会では、上記のような改革項目についてはすでに一定の実績がある議会も少なくない。第一次分権改革の前後にも議会改革が一定の広がりを見せた時期があり、その中には、改革の先進事例として紹介されることの多かった議会も含まれている。

  それに対して、栗山町議会基本条例以降、議会改革の先進事例として紹介される取り組みは、10年前とは顔ぶれも大きく変わり、改革の柱となる内容も異なってきている。それならば、10年前の改革項目はすでに現在では実現されているのが当たり前になっているのかというと、決してそうではなく、現在先進事例として紹介されている議会の中にも、新しいタイプの改革策と、10年前からの改革メニューの両方に同時に取り組んでいるところも存在する。

  現在取り組まれている自治体議会の改革メニューの中には、何種類かの質の異なるものが含まれている。おおまかに整理するなら、①議会の審議方法の改革、②議会の情報の公開や積極的な発信、③議会にかかる経費の改革(削減)、④議会の政策機能の強化、⑤市民と議会との関係づくり、などに分類できる。この中には、以前から一部の議会では実現されていたものもあれば、最近になって注目を集めるようになった手法もある。①から③については、すでに相当の期間にわたって取り組まれてきた事例のある改革項目であり、④と⑤については、比較的新しい改革事例で脚光を浴びているという傾向はあるが、それらは必ずしも段階的に実行していかなければならないものでもない。また、もっぱら③だけに取り組んでいる議会もあれば、逆に③以外こそ先行して取り組まねばならないとしている議会もある。

  前年につづく第2冊目にあたる『議会改革白書2010』では、第1章において⑤に、第2章においては自治体運営における議会の役割という観点から④に焦点をあわせ、取り組みの概況を分析するとともに、先端事例を紹介した。第2章ではまた、②についてあらためて現段階の取り組み水準を示している。第3章では、議会基本条例について論点を整理したうえで、制定済みの条例の条文構成や制定過程についての比較分析を行った。自治体議会運営実態調査2009の結果は第4章に掲載した。その後の議会改革の急展開を考え合わせるなら、主として2008年の議会運営の実態を示すこの調査結果は、多くの議会にとって「今次の改革の直前の姿」を記録するものになっているというべきかも知れない。そして、その中に、改革に先行した一部の議会の取り組みが浮かび上がっている。この分布が今後は急速に変化していき、やがて現在の「浮かび上がった改革議会の姿」が将来においては「標準的な姿」になっていく過程が見られることを期待したい。

  資料編には2009年9月議会までに改正、制定された議会基本条例を収録した。議会基本条例の制定に取り組んでいる議会、また、制定済みの議会基本条例の改正を検討している議会(昨年に続いて栗山町議会基本条例本文が再度収録されているのは、その後改正されたからである。ちなみに、これまで同条例は3回の改正が行われているが、それ以外に制定後改正された議会基本条例はない)の関係者の方々には、『議会改革白書2009』収録の条例や、本書の第3章とあわせて活用していただければ幸いである。

2010年2月 自治体議会改革フォーラム 呼びかけ人代表 廣瀬克哉

目 次
第1章 市民と議会の関係づくり  
市民と議会の関係づくり  議会改革の根底にある目標はどう実現されようとしているのか
  自治体議会改革フォーラム呼びかけ人代表 廣瀬 克哉
対話をもとに政策形成サイクルを実践―福島県会津若松市議会
  田澤豊彦 会津若松市議会議長
議会報告会・懇談会で市民との信頼を築く―京都府京丹後市議会
  大同 衛 京都府京丹後市議会議長
議会報告会を議会改革の柱に―福島県南会津町議会
  渡部俊夫 南会津町議会議員
栗山町議会モニター制度に参加して
  高橋 慎 栗山町議会モニター・元栗山総合計画審議会委員
議会ウォッチングによる市民と議会の関係づくり―所沢市「傍聴席」の活動から
  本間 滋 所沢市・市民グループ「傍聴席」
いまこそ、市民と議会の対話を―市民主催による対話集会の試み
  守屋輝彦 小田原市・市民と議会の対話集会実行委員会
自治体基本条例案策定に議会はどう関わったか―新潟県上越市議会
  石平春彦 上越市議会議員(元議長)
第2章 市民自治体へ向けた議会改革  
自治体運営と議会―評価と予算審議
  菅原敏夫 (財)地方自治総合研究所研究員
総合計画の進行管理と行政評価―評価と予算審議
  中島武津雄 飯田市議会議長
議会のアカウンタビリティ  ―合議制機関の説明責任とは何か
  三木由希子 情報公開クリアリングハウス理事
情報提供と政策提言で「実感できる議会」をめざす  ―北海道福島町議会
  溝部幸基 福島町議会議長
  コラム:議会ホームページを開設しよう!(福島町議会)
議長マニフェストと県民参加へ向けた議会改革  ―三重県議会
  三谷哲央 三重県議会議長
  コラム:委員会説明資料のホームページ掲載について(三重県議会)
市民と議員の政策づくり
  饗庭 伸 首都大学東京准教授
第3章 議会改革の到達点と今後の課題  
議会基本条例の諸論点―先行条例が開拓してきた到達点と今後の課題
 廣瀬克哉 法政大学法学部教授
全国議会基本条例制定状況(2009年12月末現在/87条例)
議会基本条例の2009年の動向について
 長野 基 跡見学園女子大学専任講師
議会基本条例文比較一覧表(2009年1月~12月/56条例)       
第4章 全国自治体議会運営実態調査 結果報告2009  
全国自治体議会の運営に関する実態調査2009 調査結果概要
全国自治体議会の運営に関する実態調査2009 集計表
全国自治体議会の運営に関する実態調査2009 回答自治体一覧表        
資料編  
議会基本条例制定過程状況(2009年1月~10月/46条例)
議会基本条例条文集(2009年1月~10月/46条例+改正栗山町条例)