議会改革白書
議会改革白書2013年版 成果志向の実践とアプローチ
編著 廣瀬克哉・自治体議会改革フォーラム
生活社 2013年7月27日発行 本体3,500円 A4判 248ページ

議会の見える化、ネクストステージへ/議員・委員間討議の成果が見えてきた

市民との対話とコミュニケーションツール/計画・予算への取り組みと提言・評価
議会基本条例/自治基本条例/議会事務局改革/議会改革ツールボックス
議会運営実態調査(2013)/議会基本条例条文分析・改革動向と到達点 ほか



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はじめに
 2009年から毎年発行してきた『議会改革白書』も、これで5冊目となる。議員の任期に類比していえば、2期目に入ったところである。1期目の締めくくりにあたる2012年の白書は、議会基本条例の制定という、議会改革の手法が拡がり始めたそれまでの時期から一歩進んで、これからは議会改革の成果が問われるという課題意識のもとで編集された。

 2期目の冒頭となる今年は、すでに都道府県議会の過半数、市議会の3割以上が議会基本条例を制定し、全国400以上の自治体で議会報告会が開催されている状況の中にある。議会改革に取り組むこと自体は普及したが、その成果が期待された内実をもっているかどうか。それによって政策がどのように良くなったか。この白書では、その成果の具体例を紹介し、広く共有することを目指している。

 政策決定には大小がある。大きな事業の採否やその内容の策定、自治体全体の将来を描く基本構想や基本計画の改定などをめぐって、賛否が分れ、選択が問われるような「いざという時」に、議会の決定の重みは自ずと浮かびあがってくる。そういう場面で、市民と対話を重ねながら、時として行政からの提案を否定したり、修正したりしながら自治体の政策方針が決まるような場面は、議会改革の成果を分かりやすく伝えてくれる。本書第1章テーマ2に掲載されている事例のいくつかはそうしたタイプの成果である。

 他方、小さな日常的な政策決定も、議会という場で決着がつけられる。大多数が、首長提案の原案可決というのが統計的な事実である。しかし、それについても、きっちりと議会の場での検証を経ているから大丈夫だと納得できるものである必要がある。原案可決という小さな決定は、事件にならず注目も集めないが、それが集積した全体としては自治体の政策の実質的な内容の大半を占めている。それについて市民に伝えることは、容易なことではない。

 議会報告会への参加者が拡がらない、議会になかなか関心を持ってもらえないという悩みをかかえている自治体は少なくない。それに対する打開策のひとつが、多様なチャンネルを通して丁寧に情報発信をしていくことであり、政策決定の過程に関する情報を市民に対して開きながら、政策決定の論点を理解してもらうことである。また、市民と議員の直接対話の場における、市民からのアプローチや、市民と議員の対話を媒介し、促進するスキルを持った人を立てるという手法なども、状況を打開する結果につながっていくことが期待される。本書第1章テーマ1の事例からは、さまざまなヒントが得られるものと考えている。

 成果志向の議会改革の取り組みを強化していく中で、本来不可欠なのが議会事務局の強化である。自治体組織のスリム化への流れが圧倒的な現在の状況下で、事務局の人員増加をともなう改革の実現は困難であるのが実際だが、その制約の中であっても、何らかの方策をとっていく必要がある。議会事務局研究会から寄せていただいた研究成果の報告は、そのための具体策2つに関するものである。

 議会基本条例に関しては、2012年に制定された107本を分析するとともに、あらためてその条例の源流に遡った報告を、当事者から寄せていただいた。また、条例の意義づけや位置づけという点で、避けては通れない自治基本条例と議会基本条例の関係、議会と自治基本条例の関係についての論考と、事例報告を収録した。

 ところで、議会活動の新たな取り組みを実行しようとする時、法制度や予算などの面で、前例のないところで取り扱い方法を決めなければならない事がある。近年の制度改革で導入された地方自治法100条の2にもとづく専門的知見の活用や、通年議会の実施方法などは、制度自体が新しいと同時に、従前の制度のもとでもほぼ同様な活動ができるため、現場では実施方法についての模索が重ねられている。

 専門的知見に関する実施方法の分析と、資料編に収録した通年議会関係の例規などは、現時点での取り組み実例を示すものであり、後に続く議会での活用を期待している。

 ところで、この文章を書いている時点で、参議院選挙が行われている。刊行される時点ではすでに結果は出ていることになるが、衆参のねじれ解消の如何によって、内閣と国会の関係が大きく変わる可能性がある(現時点での予測では、ねじれ解消の可能性がきわめて高い)。その意味で、選挙結果に大きな意味のある選挙であるにも関わらず、今ひとつ盛り上がりに欠けたままである。

 政治の有効性を実感できないという事態をどう打開していくのかが問われている。本書に掲載されている地方議会の取り組みは、身近な政策課題をめぐる、実質的な取り組みを通して、その打開につながっていく可能性を内包したものであることを、このような政治状況のもとで、あらためて確認しておきたい。

2013年7月 編者を代表して 廣瀬克哉

目 次
第1章 成果志向の改革実践とアプローチ  
巻頭提起 成果志向の議会改革は動き出したか
  自治体議会改革フォーラム呼びかけ人代表 廣瀬 克哉
テーマ1 市民と議会の対話とコミュニケーションツール 
つながる「議会と語ろう会」
  永平寺町議会議員 河合 永充・松川 正樹・川崎 直文
ICTを利活用して、市民が“見たくなる議会”へ
  流山市議会広報広聴特別委員会 委員長 松野 豊
その議会改革は誰のため?議会の見える化のネクストステージへ
  鳥羽市議会事務局 北村 純一
東村山市民の試み 議会ってなんだろう?─市民と議員が語り合う会
  議会を知りたい市民の会 上坂 裕美・馬場 貴子
コラム:発展するか 市民が議会を育てる関係─所沢市議会報告会傍聴記
  自治体議会改革フォーラム
コラム:市民を軸とした議会報告会の運営方法─流山市議会報告会
  市民と議員の条例づくり交流会議運営委員 田中富雄
地方議会の広報・広聴におけるソーシャルメディアへの期待
  三菱総合研究所 米山 知宏
テーマ2 計画・予算への取り組みと提言・評価 
決算・評価・予算と議会
  公益財団法人地方自治総合研究所非常任研究員 菅原 敏夫
葉山町第三次総合計画後期基本計画を修正議決
  葉山町議会議員 横山 すみ子
委員・議員間討議による会津若松市営住宅建替問題への取り組み
  会津若松市議会議員 樋川 誠
予算審議における情報共有と常任委員会の機能強化よる政策提言
  庄内町議会議長 富樫 透
議員間討議による審議活性化と総合計画づくり
  小値賀町議会議長 立石 隆教
計画・予算(自治体財政)への議会の取り組み
  西和賀町議会議長 佐々木 正裕
第2章 市民自治体と議会改革をめぐる論点・問題提起  
テーマ1 議会基本条例 
議会基本条例の源流に遡って─議会基本条例試案(2004年)を振り返る
  元・北海道自治体学会議会研究会 渡辺 三省(札幌市西区企画課長)
条文分析 2012年制定の議会基本条例に見る議会改革の動向
  首都大学東京/市民と議員の条例づくり交流会議運営委員 長野 基
議会基本条例条文比較分析一覧表(2012年制定)
議会基本条例制定状況(2012年12月末段階)
テーマ2 自治基本条例 
議会として自治基本条例をどう活かすか─自治基本条例の制定効果と活用法
  市民と議員の条例づくり交流会議運営委員 田中 富雄
市民主役条例─議会が作った市の基本条例
  加賀市議会事務局長 表 雅裕
テーマ3 議会事務局改革 
議会事務局(法務部門)の共同設置について
  議会事務局研究会 高沖 秀宣(元三重県議会事務局次長)
議会事務局におけるシンクタンク機能の設置
  議会事務局研究会 露本 康裕(神戸市会事務局政策調査課長)
テーマ4 議会改革ツールボックス 
専門的知見の活用や第三者も参加する機関の設置等の現状と意義について
  法政大学兼任講師 岡﨑 加奈子+自治体議会改革フォーラム
第3章 全国自治体議会運営実態調査 結果報告2013  
全国自治体議会の運営に関する実態調査2013 調査結果概要
全国自治体議会の運営に関する実態調査2013 集計表
全国自治体議会の運営に関する実態調査2013 回答自治体一覧表
資料編  
「通年の会期制」関連例規等
「定例会を年1回とする通年議会」関連例規等
議会基本条例条文集(2012年中に制定された条例より抜粋)
議会改革の“成果”と議会(議員)立法
  首都大学東京/市民と議員の条例づくり交流会議運営委員 長野 基