議会改革白書
議会改革白書2015年版 課題と方法が見えてきた!
編著 廣瀬克哉・自治体議会改革フォーラム
生活社 2015年10月31日発行 本体3,500円 A4判 224ページ

課題と方法が見えてきた!

検証して活かす 議会基本条例/広がる 議員立法の実践
議会改革メニューを使いこなす(議員間討議/議会報告会/計画の議決事件化)
自治体計画と議決責任 議会改革の今を読み解く(議会報告会見聞録/モニター・サポーター/議会基本条例と規則整備)
全国自治体議会運営実態調査(2015) 議会基本条例条文分析と傾向 ほか



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はじめに

 2015年春に行われた統一自治体選挙では、無投票に象徴される担い手不足と低投票率が主な話題となった。他方、都市近郊などでは、比較的若い候補者が多数出馬し、空前の激戦となった選挙も少なくない。しかし、それでもなお投票率は低下の傾向が続いている。社会が政治家を選挙に送り出すしくみそのものが変化しつつあり、残念ながらそれが社会の構成員の多くに対して、意義ある選択肢として映っていないということなのであろう。
 
 地方自治体全般にとっては「地方創生」が重要テーマとなり、人口減少社会への対応が喫緊の課題として危機感をもって受け止められている。人口が減ることそれ自体も課題を提起するが、人口がさほど減らないと想定されている自治体でも、年齢構成の変化(減らない自治体の場合には高齢者の激増)のインパクトは非常に大きい。政策の基本的な方向性の転換が必須となっている。制度や政策という次元での対応が必須であることはもちろんだが、地域社会と地方政治・行政との関係性という次元でも対応が求められている。残念ながらそれが現時点ではあまりうまく行っていないことが、上記のような統一地方選の情勢にもあらわれていたのではないだろうか。そういうマクロな意味で、地方自治は今、次の段階への転換を求められつつ、なお模索している段階にある。
 
 そのような状況下の現在も、議会改革の広がりは続いている。2015年には議会基本条例の制定数が700をこえた。一部の先駆的な自治体までで止まる動きなのではなく、大方の自治体に広がっていく普遍性をもった動きの段階に入ったと言えるだろう。これまでは、議会改革を行うこと、議会基本条例を制定することについて、なぜそれに取り組むかの説明が求められる状況だったが、今後は徐々に、なぜ制定しないのかについて説明が求められるようになっていくのかも知れない(実際、いま制定しないことを積極的に選択し、それはなぜかを説明している自治体も登場した)。
 
 それだけ議会改革が普遍化する一方で、これまで進められてきた、議会基本条例の制定による議会の制度整備だけでは決め手に欠くという感覚も広がってきているようだ。しかし、これまでに議会改革のなかで整備されてきたさまざまな議会の制度や、活動メニューが、その可能性を十分に追求し切った上で壁にぶつかっているとは、まだ言えないのではないだろうか。それよりも、制度を整備する段階で小休止している状況の議会も少なくないのではないだろうか。
 
 ひとつの改革実践が、その実践経験を通して認識や行動の転換をもたらし、それを通して議会という代表機関の活動や成果が新しく具現化してくる。議会改革にはそういう展開が期待できる面があることも確かである。現在先駆的な議会として評価されている議会の多くは、そういう歩みの成果として現在があるところも多い。実践しながら考え、途中経過をみて修正することで改革が形をなしていく。パイオニアの宿命といえるだろう。改革が普遍化する段階に至ると、先行例それぞれがもつ固有性を集約、分析することにより、ある程度一般的に、改革メニューのそれぞれがもつ特性を踏まえ、普遍的にとらえた課題への対応を深めていくことが可能になってくる。
 
 一般的に導入されてきた新しい議会のしくみや、地方版総合戦略や公共施設等総合管理計画のように、外在的に導入されてきた現時点の諸課題を、各自治体にとって有効なやり方で使いこなしながら前に進んでいくことが今求められている。場合によっては義務的なものも「いなし」ながら、自分にとって必要な取り組みにできる限りの資源(財源だけでなく人手や知恵を含め)を集中するような戦略的対応も必要だろう。
 
 このタイミングだからこそ、あらためて手もとに揃っている道具の特性と、何のためにそれを使うべきだったのかの認識を再確認した上で、課題に対応した使いこなしを深めていく余地が、まだまだ大きいのではないか。この白書が、そのような探索に際して、ひとつの地図として役立てば幸いである。
 
2015年秋
編者を代表して 廣瀬克哉

目 次
第1章 課題と方法が見えてきた! 
議会改革メニューを使いこなす
 課題の再確認と次段階への期待
  自治体議会改革フォーラム呼びかけ人代表 廣瀬 克哉

第2章 検証して活かす 議会基本条例 
北海道旭川市議会
議会運営の自己評価と外部検証
  市民に課題を明確に示し、焦点をしぼって改革に取り組む
   前旭川市議会議長 三井 幸雄

北海道芽室町議会
議会基本条例と議会活性化計画の推進
  マネジメントサイクルの導入と制度化による議会改革戦略
  芽室町議会事務局長 西科 純

岩手県久慈市議会
じぇじぇじぇ基本条例と議会PDCAの取り組み
  議会活動チェックシートの活用で検証の効果がみえてくる
  久慈市議会事務局主任 長内 紳悟

第3章 自治体計画と議決責任 
議会改革の成果を高めるツールとしての総合計画

  市民と議員の条例づくり交流会議運営委員 田中 富雄

あらためて基本構想のあり方と議決の意義を考える
 策定義務づけ廃止後も残る最上位計画としての位置づけ
  法政大学教授 廣瀬 克哉

「人口ビジョン」「総合戦略」と地方議会の責任

   読売新聞東京本社編集委員 青山 彰久

第4章 広がる 議員立法の実践 
神戸市会
神戸市みんなの手話言語条例
  政策条例制定のプロセスと当事者参画による条例づくり
   神戸市会事務局

長野県飯綱町議会
飯綱町集落振興支援基本条例
  地域の重要課題「集落問題」への取り組みと議員立法
   飯綱町議会議長 寺島 渉

千代田区議会
千代田区水辺を魅力ある都市空間に再生する条例
  都市構造を形づくる川の利活用促進へ議会から発信
   千代田区議会

北海道倶知安町議会
倶知安町ニセコひらふエリアマネジメント条例
  議員提案の条例から始まる新しい自治の形
   倶知安町議会議員 田中 義人

第5章 議会改革の今を読み解く 
議会報告会見聞録
 それぞれの自治体の姿にあった参加の場
  長野県短期大学助教 野口 暢子

議会モニター・サポーター制度の動向
 市民と議会との継続的なコミュニケーション
  首都大学東京准教授 長野 基

議会基本条例にともなう運用および規則整備の重要性
 東村山市議会にみる議会改革の新たな論点
  法政大学兼任講師 岡﨑 加奈子

条文分析 2014年制定の議会基本条例に見る議会改革の動向
  首都大学東京/市民と議員の条例づくり交流会議運営委員 長野 基

 2014年制定の議会基本条例に見る議会改革の動向比較表
 2014年制定の議会基本条例に見る提示指定「政策情報」項目
 2014年制定の議会基本条例に見る「議決事件の追加」項目
第6章 全国自治体議会の運営に関する実態調査2015調査結果報告 
 全国自治体議会の運営に関する実態調査2015 調査結果概要
 全国自治体議会の運営に関する実態調査2015 集計表
 全国自治体議会の運営に関する実態調査2015 回答自治体一覧表
資料編  
議会基本条例条文集(2014年中に制定された条例より抜粋)